新恐竜秘宝館

Vol.50 「祝!カムイサウルス」2019.10.1

まさかの恐竜博開催中の学名発表。しかもエドモントサウルス(もしくはブラキロフォサウルスまたはケルベロサウルス)・ムカワエンシスなどでは無く、正真正銘新属新種。前回密かに応援した甲斐があったというものです。こうなっては、新しいネームパネルが付けられた元むかわ竜の雄姿を見届けないわけにはいかないと、9月半ばに4度目(3度目は夏休み明け)の恐竜博見学に行ってきました。もちろん、記念に配られるというカムイサウルスのトレーディングカード目当てでもありましたが。

カムイ効果もあってか、平日だというのになかなかの賑わい。デイノニクスに挨拶してからまずはお目当てのカムイサウルスを目指します。期待したほどお祭り騒ぎではありませんでしたが、「祝・新種命名」のめでたい赤く丸いパネルと、新たに壁に取り付けられた電飾付き「カムイサウルス」のパネルが誇らしげです。しばらく新属新種の香りを満喫した後デイノケイルスの所に戻りました。
今回はデイノニクス、デイノケイルス、カムイサウルスに的を絞ったので、それぞれたっぷりと時間をかけて見ました。で、今まで見る間も惜しんでいた、デイノケイルスコーナーで流されているNHKスペシャルの映像「デイノケイルVSタルボサウルス」を観賞したところ、なんとデイノケイルスがタルボをフロントスープレックスで投げ飛ばしていました。(放送時にはデイノケイルスの変顔に圧倒されて見過ごしていた様です。)いいのか!?お前はコングか?ウルトラマンか?と突っ込みを入れたくなるような恐竜プロレスを博物館で上映するのはいかがなものかと憤ってはみたものの周りの見学者は面白がって観ていましたし、こういった事が相まって50万人を超える入場者を集めたのですから、これも有りかなと今となっては思います。
 
さて…白状してしまいますと今回の最大の目的地はショップ。コレクターとして初カムイサウルスグッズは見逃せません。図録も改訂版があれば購入する気満々だったのですが、残念ながらこれは無し。(「恐竜博2019」のHPから自分で改訂する為の「修正表」がダウンロードできます。)
オフィシャルグッズも「祝カムイサウルス」コーナーこそ設けられているものの、今更パッケージの名前を改める気は無いようです。
そんな中、さすがに地元のむかわ町はやってくれました。前回紹介したむかわ竜の3Dぺーパーパズルです。(画像1)
n_hihoukan_no1.png n_hihoukan_50_1.jpg おそらく事前に作って学名発表を待ちかまえていたのでしょう。見事に差し替えられていました。間違いなくカムイサウルスフィギュアの第1号です。しかしこうなると毛筆風ロゴで「むかわ竜」と書かれたバージョンは逆に貴重で、パッケージをとっておいて本当に良かったです。

同じくむかわ町産のティラノサウルス(画像2)
n_hihoukan_no2.png n_hihoukan_50_2.jpg 前回の秘宝館で「夏休み明けに行って無かったらきっと後悔する」などと書いてしまったのですが、3回目に行った時には幸か不幸かまだあり即購入(4回目の時には、むかわ産の3種類のフィギュアは全て姿を消していました!)。後悔は免れたのですが、フィギュアとペーパークラフトで約1万円、飛んで行きました。
3Dペーパークラフトの方は、前回紹介した「むかわ竜」「フォスフォロサウルス」同様素晴らしい出来でしたが、フィギュアはというと、造形は良いのですが、パーティングラインは目立つし塗りは雑と、少々残念な出来。やむなく少しだけ手を加えてしまいました。
前回も書きましたが、このティラノ達は会場の「スコッティ」がモデル。名指しのティラノフィギュアは2005年の「スー」以来ですが、あの時のスーフィギュアは会場の骨格を反映していませんでした。今回はしっかりスコッティしています。

今回のティラノ展示について。恐竜博2019開催に合わせて出版された「恐竜の魅せ方」(真鍋真著・CCCメディアハウス)に面白い事が書かれています。恐竜博監修者の真鍋先生は当初はティラノの展示を考えていなかったのですが、主催のNHKと朝日新聞社の「やはり恐竜博にはティラノ」的な意向で決まったそうです。3種類のフィギュアの原型を製作した田中寛晃さんのお話も載っていて、やはりティラノは追加発注だったとの事。この本、こういった今回の展示の舞台裏や、関わった人たちの独白が載せられた、非常に興味深い本です。未読の方は是非読んで、残り1週間ほどとなった「恐竜博2019」に今一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

*3種類のむかわ産フィギュアを集めるとこの様になります。(画像3)
n_hihoukan_no3.png n_hihoukan_50_3.jpg 真鍋先生はこの本と、さらに同時期に発売されたエッセイ集「恐竜博士のめまぐるしくも愉快な日常」(ブックマン社)の中で、ご自身のデイノニクスへの想いを熱く語っています。(私のデイノニクスへの想いは新秘宝館Vol.11で)
しかしながら残念な事に、今回の3大目玉の一つで図録の表紙も飾ったというのに、デイノニクスグッズは、ヌイグルミと孫の手とガチャポンしかありません。(画像4)
n_hihoukan_no4.png n_hihoukan_50_4.jpg 本来ならばティラノの代わりにフィギュア化されていたのでしょうか。デイノニクスの本格的なフィギュアや骨格模型は意外と少ないので、欲しかった所です。ヌイグルミは押さえる所は押さえていて好感が持てますが、人気の面では同じオフィシャルヌイグルミのNHK風デイノケイルスに敵わなかったようです。デイノケイルスは早々にSOLD OUTになっていました。孫の手は、肉眼ではギラギラしていてよくわからなかったのですが、こうして写真に撮って明るさを調節して拡大して見ると、意外な程作り込まれていてびっくりです。これで指骨の数が正確で、肝心な半月状の手根骨が表現されていたら、今回のベスト・アイテムに推すところでしたが。

今年の夏の主役は何と言っても、あのデイノケイルス。フィギュアは大方前回紹介してしまったのですが、ちらと触れた更新前の姿をしたコレクタ製絶版デイノケイルスを手に入れてしましました。お値段は定価の倍以上しましたが、もう2度とお目にかかれないスタイルのデイノケイルス・フィギュアとあれば、コレクターとしては手元に置いておきたい所。並べるために買った同スケール(1/40)の更新版との2ショットです。(画像5)
n_hihoukan_no5.png n_hihoukan_50_5.jpg 旧スタイルとは言え、発売されたのは2012年と新しく、既に全身羽毛化していますし、腕には今風に小さな翼まで付け、当時推測されていたデイノケイルスの姿―超巨大化した原始的な特徴が残るオルニトミモサウルス類を、ガルディミムス等を参考にしっかりと表現しています。中足骨は短め、進化したオルニトミモサウルスでは失われている第一趾も再現と、なかなかの力作だったのですが、2014年暮れには早々に全面否定されるという悲劇の短命フィギュアになってしまいました。コレクタ社もよほど無念だったのか、2016年に発売した通常シリーズと翌年のデラックス1/40シリーズの新デイノケイルスの顔を、旧バージョンと同じ色に塗り分けています。

*デイノケイルスのフィギュア達を見てふと気が付いたのですが、どれも手の構えが一緒です。あの手だけだったころのポーズを受け継いでいる様です。もうちょっとバリエーションがあっても良さそうですが、「恐ろしい手」のイメージの呪縛からは逃れられないのでしょうか。

「恐竜博2019」関連の本も、この夏、10冊程出版されました。紹介しましょう。(画像6)
n_hihoukan_no6.png n_hihoukan_50_6.jpg「きょうりゅうのサン・いまぼくはここにいる」(かさいまり アリス館):きょうりゅうのサンが海に流され、化石となりむかわ竜と名付けられるまでのお話を絵本にしたもの。
「漫画・むかわ竜発掘記」(土屋健企画原案 誠文堂新光社):実在の関係者のまんが顔が楽しめます。
「恐竜まみれ」(小林快次 新潮社):筆者が体験した様々な発掘エピソード。むかわ竜とデイノケイルスの事も詳しく語られています。
「恐竜超世界」(日経ナショナルジオグラフィック社)NHKスペシャルのCGをふんだんに使い、主にデイノケイルスとモササウルスについて書かれた本。なぜかむかわ竜は、巻末の方に骨格を床に並べた写真と記事が数ページ有るだけで、軽い扱いです。デイノニクスは影も形もありません。
「恐竜の魅せ方」(真鍋真 CCCメディアハウス):前述のとおり、必読です。
「GET AWAY TRIKE ! in Press vol.3」:洋書ではありません。らえらぷすさんという方が書いている同人誌で、後ほど報告する「古生物創作合同展示会」というイベントで手に入れたものです。らえらぷすさんは、ネットで活躍されているその道では有名な方で、「恐竜博2019」で使われた骨格図(たとえば図録の最後のページのカムイサウルス骨格図等)を描いています。この本には、そのカムイサウルス骨格図の決定稿に至るまでの経緯が詳しく書かれていて、非常に興味深い内容です。らえらぷすさんはブログでもカムイサウルスについて書きまくっています。こちらをどうぞ。
「へんなものみっけ!(4)」(早良朋 小学館):博物館の裏側を描いたシリーズ弟4弾。内容に恐竜は出てきませんが表紙と扉が恐竜博2019と思いきりコラボしています。会場でも販売されていました。
「子供の科学8月号」(誠文堂新光社):日本の恐竜特集。むかわ竜も詳しく紹介され、骨格のペーパークラフトがとじ込み付録になっていますが、ミシン目もなく綺麗に作るのは難しそうです。
「小学8年生8・9月号」(小学館):小学8年生は、長年の間親しまれてきた学年別「小学○年生」の後を受け継いだ全学年向け隔月刊誌。「日本の恐竜学世界をこえる!小林快次先生に聞く調査・研究の最前線」と題した、むかわ竜やデイノケイルスに関する記事があります。
「日経サイエンス9月号」(日経サイエンス社):実際の発売日は6月末。恐竜特集の中に「実物化石が語る新たな恐竜像」と題した恐竜博2019の紹介記事があります。

今年の夏の恐竜本はなかなかの豊作で、数は40冊ほどと「JW炎の王国」関連の本が多かった昨年を下回りましたが、内容が濃いものが多く、結果本の山がまたひと山増えてしまいました。

さて、シューイチ収録に始まった私の恐竜の夏ですが、今年もなんとか乗りきる事ができました。8月に行った恐竜イベントから。

8月のはじめ、「最後のワールドツアー」の文句に誘われ、つい横浜アリーナの「ウォーキング・ウィズ・ダイナソー・ライブエクスペリエンス」へ行ってしまいました。2010年の初来日を見た時は感激した記憶があるのですが、2013年の公演の時に何も変わっていないのにがっかりした事さえ忘れ3度目。別にショーがリニューアルされているわけではなく、恐竜たちはくたびれた感があって心なしか数も減っている様な…。日々更新される今の恐竜界では10年も前のものはひどく古臭く感じられます。そして期待のグッズは…お祭りなどで見かける、くるくる回る電飾オモチャ(一番安かったティラノの歯の形をした物を買いましたがそれでも2000円。セレーションなど望むべくもなし)とつまらないTシャツのみ。入場料6000円も払って散々な結果に。

「ヨコスカ恐竜パーク2019」は有名造園家金井良一プロデュースというところから???で、全く期待していなかったのですが、正に予想通りでした。(画像7)
n_hihoukan_no7.png n_hihoukan_50_7.jpg 三畳紀・ジュラ・白亜紀を植物で表現しているって、いったいどこが!?恐竜ロボットも小さいし動きも悪く背景もチャチで、昭和のデパートの動く恐竜展の野外版といった風情がありました。ただその中で、写真中央のティラノは最大級(1/2程)でそこそこの出来。瞬きするのですが、眼をつむっている時間が長く、その間、老人が深くため息をついている様な、世の中を達観している様な、なんとも穏やかな表情になり、一時癒されました。プテラノドンは冗談以外の何物でも無くスピノサウルス対決も何か懐かしい…。1500円払って買ったグッズは絵葉書だけ。会場でスコールにも見舞われ、こちらも散々な1日でしたが、ついでに行った軍港クルーズが良かったので救われました。

そして夏の最後を飾ったのが先ほど触れた「古生物創作合同展示会」。3回目を迎えるこのイベント、今回は横浜・伊勢佐木町に有る爬虫類カフェ「横浜亜熱帯茶館」で開催されました。古生物イラストレーターの山本聖士さんが主宰するこの催しは、ネットや同人誌などで活躍する10人のディープな恐竜人が意見を交換し合ったり、自作のイラスト、フィギュア、本などを販売するもの。恐竜倶楽部のメンバーも何人か参加しています。
会場の「横浜亜熱帯茶館」は初めて行きましたが、猫カフェの爬虫類版で1mを超すグリーンイグアナなどが放し飼い(殆ど動きませんが)になっています。店内は住人に合わせてクーラーが控えめになっていて、そこに10人を超える人間がいるわけですから尋常な暑さではありません。亜熱帯どころか熱帯雨林でした。リクガメなどの餌も置いてあるわけで、当然ゴキブリも棲息、時折巨大な奴が床を走るのですが、恐竜人達はそんな事には眼もくれず、暑い中さらに熱く恐竜を語り合うという、有る意味極上の空間でした。夏の終わりを締められて良かった…。
n_hihoukan_no8.png n_hihoukan_50_8.jpg (画像8)はその戦利品の数々。「地獄の恐竜時代」はヘルクリーク層産出の恐竜を詳しく解説した本で、ヘルクリークにひっかけたタイトルと「地獄の黙示録」風の表紙が「判るやつだけ判ればいい」的で好みです。アヌさん著。その下の全高3cm程の可愛すぎるヴェロキラプトルは、恐竜倶楽部仲間で、鎧竜マニアとして知られるアサイナさんの作品です。

最後に、この夏観た恐竜が出てくる映画を2本ご報告
「アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲」では
ヒトラーが支配する地底世界アガルタに恐竜が棲息しています。ヒトラーはティラノサウルスに乗って登場…て、どんな映画や!
説明しづらいので、ネットで検索してみて下さい。馬鹿馬鹿しくも面白い映画でした。
もう1本は意外にもあの大ヒット作「天気の子」です。主人公の弟が引っ越すために荷づくりをしている場面で、ダンボール箱の中にティラノらしき骨格が表紙の本がちらりと…。こんな事に気付く人はまずいないでしょう。発見して私に教えてくれたのは以前秘宝館に協力していただいた事もある、恐竜倶楽部会員の折り紙師、高井弘明さん。折り紙だけでなく多方面に精通した“達人”です。さすがです。

「カムイサウルス・ジャポニクス」
インパクトがあるいい名前だと思います。今までの日本産の新種の属名は、フクイ~、タンバ~と地名づくし。直球過ぎてやや面白みに欠けるなあと思っていました。フタバサウルスの時も、学名の何処かにピースケを入れて欲しかったなと思ったものです。
日本の恐竜にも、こうした華やかな、遊び心(と言っては怒られるか?)に溢れた学名が付けられたのは嬉しい事です。

田村博氏

田村 博 Hiroshi Tamura

ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。

田村 博氏のオフィシャルサイトはこちら

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