新恐竜秘宝館

Vol.49 「むかわ竜応援プロジェクト―ハドロサウルス亜科フィギュア大集合」2019.8.1

7月14日放送の日テレ「シューイチ」で、我家の恐竜部屋が紹介されました。あまり前宣伝しなかったのですが、かなりの人気番組だったようで偶然観た知人も多く、一様に呆れておりました。カトゥーンの中丸君(何故か皆さん君呼ばわり)の質問に思わず出た本音「(恐竜グッズは)泥沼です…」は多くのヲタクの方々の共感を得た様ですが、このコラムを読んでいらっしゃる方も「やはりな…」とうなずかれた事でしょう。

そしてこの夏、沼がまた少し深くなりました。

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「恐竜博2019」グッズ(画像1)
実はここに載せた4点は「むかわ町穂別博物館」のオリジナルグッズで、恐竜展の公式グッズではありません。恐竜展の公式グッズはと言うと、前売券とセットになっている海洋堂のミニフィギュアブロンズバージョン5種セットは当然ゲットしましたが、会場のガチャで売られている彩色バージョンはヤフオクで大人買いしようと目論み中。
その他の公式グッズは「すみっコぐらし」「どーもくん」「うまい棒」「ゾイド先行発売???」…守備範囲外です。この分では一昨年同様お菓子しか紹介できない羽目になると不安に駆られながら、ショップに溢れるデイノケイルスやデイノニクスのモフモフヌイグルミをかき分けようやく片隅の「むかわ町穂別博物館」コーナーに辿りついてこれらを発見した時は、心底ほっとしました。
むかわ竜とデイノケイルスのフィギュアは1/35位の大きさで6000円と少々お高いのですが、むかわ町で手作業で作っていて、コストが掛かり過ぎてなかなか元がとれないといった様な事を、たまたま居合わせた関係者の方から聞いては買わないわけにはいきません。後から判ったのですが、むかわ竜は、骨格を組み立てる際にポーズ決めのモデルとなった模型(NHKのサラメシに登場)を原型にしている様で、もしそうなら嬉しい買い物です。
むかわ竜と穂別産モササウルス「フォスフォロサウルス」の骨格3Dペーパーパズルは、一般に出回っている同種の製品より割高ですが、その分大きく驚くほど精密に出来ています。むかわ竜は92ものピースでできていますし、フォスフォロサウルスは口蓋歯まで表現されています。実はフィギュアとペーパーパズルにはティラノサウルス(穂別博物館が所蔵していて恐竜博2019に出張しているスコッティがモデル)もあったのですが、つい弱気になり買い控えてしまったのは、泥沼を改めて自覚したせいか?でも夏休み明けにもう一回行くので、その時にまだあったらこらえる自信はありません。そしてもし売り切れていたら、買わなかった事をきっと猛烈に後悔するのです。

グッズはさておき、今回の「恐竜博」は近来にないほど目玉揃いでした。まず出迎えてくれたデイノ二クスのまさかのホロタイプ標本はお宝度から言うと今回随一でしょう。恐竜ルネッサンスの引き金となり、今日の羽毛恐竜の原点であり、そして私を泥沼に引きずり込んだ張本人の鈎爪の実物と対面する日が来ようとは!大感激です!
そしてただただ懐かしいテノントサウルスを群れ(2匹だけでしたが)で襲う名シーン。しかしテノントサウルスが昔のイメージ(秘宝館Vol.62をご覧ください)よりもはるかに小さく、これならば一匹でも充分倒せそう。こんなのに返討ちにあったとなればデイノニクスの名がすたります。(紹介されていた共食い説は、餌が目の前に横たわってるのにわざわざ共食いする動物がいるか!という事で仲間内では却下)

デイノケイルスはビックリするほどデカくて異様でそびえ立つ姿は畏怖さえ感じられる程。NHKスペシャルのピンクのモフモフで突然毛を逆立て変顔をし(チコちゃんか!)、まつ毛が長いパッチリおめめのお母さん恐竜「ニコ」とは程遠いイメージ…とここまで書いてハッとしました。ニコ=チコではないか?これはNHKの巧妙な人気取り戦略では?だとしたらNHK恐るべしです。

*ついでに言ってしまえば今年もNHKにはがっかりさせられました。恐竜のキャラ化(名前つけたり、呟かせたり)や、話の盛りすぎ(シャチのように波打ち際の恐竜を襲うモササウルス、釣りをするトロオドン等)はまだサービスの範囲内として、餌もない海岸に、まるでサバンナのように多様な植物食恐竜がたむろしているのは如何なものか。モサ、首長竜、魚竜をまとめて「海竜」と呼んで何の説明もしないのも不親切。魚竜など一回も登場しません。そして何より、大口を開けて襲ってくる不格好でオオトカゲ感溢れるモササウルス「ジーナ」の口の中に口蓋歯が無い!ペーパーパズルでさえ有ると言うのに…。

話をデイノケイルスに戻しましょう。化石を見ておや?と思ったのが、オルニトミモサウルス類なのに中足骨が3本並んでいる事。私はオルニトミモサウルス類の中足骨はアークトメタターサル(恥ずかしながら一回でスラスラ言えたためしが無い)だと思い込んでいたのです。会場や図録ではその辺りの説明が無いため帰って調べたところ、ハルピミムスやガルディミムスのようにアークトメタターサルではない種類もいたそうで、特にガルディミムスは2014年にデイノケイルス科に再分類されたとの事。思わぬところで勉強させていただきました。

そしてむかわ竜。発掘当初から逐一情報が流され、今か今かと待ち望んでいた全身骨格が目の前に横たわっているなんて、何ともありがたい事です。凄い化石でした。小林快次博士が日本一の恐竜化石と豪語し、これでもかという程本を出しまくるのも充分納得です。
しかしながら会場人気は圧倒的ビジュアルのデイノケイルスや最大級のティラノサウルス「スコッティ」の方が上だったような気がします。たしかにむかわ竜は見た目地味な恐竜。もっと言えばむかわ竜が属しているハドロサウルス科ハドロサウルス亜科は恐竜界でも屈指の地味恐竜でしょう。ハドロサウルス科のもう一方の雄、ランベオサウルス亜科には、ハドロサウルス科の中で最多フィギュア数を誇るパラサウロロフスを筆頭に、コリトサウルス、ランベオサウルス、チンタオサウルス等有名どころが揃っています。奇妙なトサカを持つおかげで識別できるのが強み。それに比べハドロサウルス亜科最大のスター、マイアサウラは子連れでなんぼといった扱いだし、かろうじて識別できるサウロロフスもパラサウロロフスのトサカが短い奴といった程度の認識です。

しかしハドロサウルス亜科のその名もずばりハドロサウルスは、1868年に、あの水晶宮恐竜を造ったホーキンズの手で史上初の2足歩行恐竜として組み立てられた歴史的恐竜なのです。(ハドロサウルス属は今でも存在しています)
https://blogs.yahoo.co.jp/rboz_05/35136796.html
http://mentalfloss.com/article/65323/10-facts-about-hadrosaurus

そして50年代から60年代、トラコドンと呼ばれたハドロサウルス亜科の恐竜はフィギュアシリーズの常連でした。今回はその辺りからむかわ竜にいたるハドロサウルス亜科のフィギュアを集めてみました。題して「むかわ竜応援プロジェクト―ハドロサウルス亜科フィギュア大集合」です。

●トラコドンからエドモントサウルスに至る系譜

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まずはこちらを(画像2)
秘宝館Vol.18でも一度登場している、80~90年代のアメリカのガレージキットメーカー、ルナモデルズの、恐竜名画立体化シリーズのひとつ、有名なブリアンのティラノVSトラコドンです。今回はトラコドンを中心にご覧ください。

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(画像3)は古き良き時代のアメリカの玩具メーカーから販売されたトラコドン達です。左から3体はSINCLAIR(秘宝館Vol.35)の60年代の物。中央の2体はメタル製で、小さい方は50年代のALVA、その右は40年代から50年代のSRG。そして有名なMARX、昔日本で大量に出回っていたMARX/MPCの香港製コピー(オリジナルが家に無くて愕然としました。買わねば…)、TIMMEE TOYと50~60年代物が並んでいます。トラコドンの頃は頬袋が無く、見るからにカモノハシ(Duckbill)恐竜で、そのユニークな風貌が人気を呼んだのだろうと思います。それがアナトサウルス、アナトティタン、エドモントサウルスと分類、呼び名が変わり(この辺りの事は良く判りません。今は全てエドモントサウルスという説もあるみたいです。)頬袋が付くと、イグアノドン同様(新・秘宝館Vol.38)、穏やかで平凡な顔になり他に特徴も無い事がフィギュア人気に響いたのではないでしょうか。

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(画像4左)70年代から80年代初期のもの。トラコドンとアナトサウルスなどが混在していますが、まだどれもしっかりアヒル顔しています。後にいるのは国産、クローバーの1/50恐竜シリーズ(秘宝館Vol.38)のトラコドンで1981の刻印が。前列は左から正体不明の消しゴム(その昔彩色したのがいい感じに剝がれています)、フランスの70年代、STARLUXのアナトサウルスと当時では珍しいシャントゥンゴサウルス。そしてメーカー不詳のトラコドン?をはさんでイギリスのINPROの1972年のトラコドンです。

(画像4右)80年代のアナトサウルスです。どれも大きく30cm位あります。左はアメリカのPLAYSKOOL、その隣はIMPERIALという中国のメーカーのもので種類は不明、1989年製。そして前面にいるのが80年代ツクダの1/30恐竜シリーズのアナトサウルス。初めて頬袋がついた記念すべきモデルです。
その後約20年間、我家ではトラコドンからエドモントサウルスにいたる系統の恐竜フィギュアはほぼ絶えることになります。

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(画像5)エドモントサウルス
上の段はどれもこの10年以内の物。左は現在も発売されているミニチュア・プラネットのもの。中央は2009年に幕張メッセで開催された「恐竜2009―砂漠の奇跡」展のお土産で、恐竜展の目玉のひとつ、ミイラ化した化石が話題になったエドモントサウルス「ダコタ」です。右は2013年の映画「ウォーキングwithダイナソー」のキャラクター。映画では最大の恐竜で大群で我が物顔で闊歩していたのに、フィギュアはミニフィギュアのみ。脇役恐竜の悲哀が漂っています…て、これじゃ、むかわ竜の応援になっていないじゃないか!
下段は我家の自慢のコレクションのひとつ1999年ANTS社の1/10頭骨モデルシリーズのものです。6cm程の物なのですが、ご覧の通りとても良く出来ています。その横で何となく置き場所に困っている感を漂わせているのは、ヤフオクでバカ安で手に入れたレプリカ。属名は定かではありません。

こちらもご覧ください。「恐竜おもちゃの博物館」アナトティタン

そして買い逃したのを後悔しているのがフェバリットのシーンモデルで絶版になってしまった「ティラノVSエドモントサウルス」です。ルナモデルズのジオラマと並べたかったな…。画像は見る事が出来ます。

*エドモントサウルスの最新フィギュアはサファリ、ジュラシックハンター、ジュラシックアクションから発売されています。サファリの物はなかなか良いのでアマゾンで注文したのですが、今回は間に合いませんでした。

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●海洋堂のハドロサウルス亜科を並べてみました。(画像6)1/35のトラコドン(カタログでは後にアナトサウルスに改訂)とマイアサウラ。そして1/20の巨大で重いシャントゥンゴサウルス。これだけです。ちなみにランベオサウルス亜科は
パラサウロロフス(3)
ランベオサウルス(2)
コリトサウルス(1)
ヒパクロサウルス(1)
と揃っています。
*食玩系とガチャ系は双方ともカウントしていません。

「恐竜おもちゃの博物館」シャントゥンゴサウルス

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●マイアサウラ(画像7)
90年代に一世を風靡したマイアサウラも最近は見かけなくなったなあと思っていたら、今回の恐竜展で、恐竜ルネッサンスをおさらいする流れで登場。かって科博のエントランスホールにいた標本でしょうか。子供が一匹になってしまったのが気に掛かります。
左手前の母子は科博1990年開催の「大恐竜展―恐竜親子の物語」で売られていた今で言う公式グッズ。金属製です。その後ろの抱卵しているのはサファリ、その右はメーカー不明の幼体ソフビで手前は元祖恐竜食玩、1993年にバンダイから発売された「最新恐竜学」の物に彩色した物。(秘宝館Vol.45)子供も付いていたのですが行方不明です。やはり子供有ってのマイアサウラです。

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●サウロロフス(画像8)
1978年の「失われた生物たち―大恐竜展」でタルボサウルスと共に初来日した時、その巨大さに圧倒された覚えがあります。その時にお土産フィギュアが作られなかったのは残念。なかなか格好良いのですがフィギュアは少ないです。
上の段はTVアニメ「恐竜キング」の恐竜王列伝シリーズの物。このシリーズはなかなかマニアックな恐竜をラインナップしていました。その右はシャントゥンゴサウルスです。下の段は70年代のソフビ、マルシンの「大恐竜」シリーズ(秘宝館Vol.37)と、ついこの間神流町恐竜センターで購入した恐竜王国秋祭りシリーズの新旧サウロロフス対決です。

「恐竜おもちゃの博物館」サウロロフス

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●我家の壁にはこんなのも掛かっています。プロサウロロフスです。(画像9)

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デイノケイルスのフィギュアも紹介しておきましょう。さすがに新参者だけあって数は少ないです。特異な身体つきなのでいじり様がないのか、みんな同じようなポーズをしています。今となっては最初にフィギュア化された神流町の物が、ウロコバージョンでユニーク。ところで頭の飾り羽?は必要なのでしょうか?無い方が格好いいと思うのですが。
左から飾り羽の無いサファリ、神流町恐竜センター、コレクタ(大きなデラックス版もあります)、そして今回の公式フィギュア。(画像10)

なんと少し前までコレクタから、普通のオルニトミモサウルス型をした、更新前のデイノケイルスのフィギュアが出ていました。格好がイマイチであまり食指が動かなかったのですが、こんなことなら買っておけば良かった。並べたら面白かったですね。

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さて、もう一つの恒例の夏のイベント「博物ふぇすてぃばる」ですが、今年は恐竜倶楽部の神流町旅行と重なって涙をのみました。しかし何も買わないのも悲しすぎるので、知人に頼んで買っておいてもらいました。恐竜陶器家の伊藤たかをさんは倶楽部仲間なのでメールでやりとりし、買う物を事前に決めました。はまりすぎの水棲スピノサウルスのぐい呑みと、今が旬のデイノケイルスです。次回はハルシュカラプトルをリクエストしておきました。ハサミックワールドさんは、ネットで目を付けていた始祖鳥ベルリン標本とカウディプテリクスが早々に売れてしまって、ディロフォサウルスを購入するだけにとどまったのは残念。また来年です。(画像11)

今年の夏の恐竜の話題をもう一つ。
先日「オン・ザ・タウン」というミュージカルを観てきました。
1万人の第九合唱の指揮者として知られる佐渡裕プロデュースのブロードウェイミュージカルで、3人の水兵のニューヨークでの24時間の休暇を歌と踊りで綴った名作です。初演は1944年で、当然時代設定もそのままです。で、何が恐竜かというと、水兵たちが自然史博物館の恐竜骨格を誤って壊してしまうシーンがあるのです。過去何度も上演されているので、その都度様々な恐竜が壊されています。私がたまたまYou Tubeで観たのはステゴサウルスでしたし、1949年に映画化された時はブロントサウルスでした。で、今回は見事な出来栄えのティラノサウルス。遠目ではレプリカと言っても良いほどです。ただなんとも残念な事に今様な水平姿勢をとっていたのです。色もベージュ系。昔のAMNH5027が再現されていたらどんなに感動したか…といった事をアンケートに書かずにいられませんでした。

次回はこの夏の総括。異常な程大量に出版され、まだ出続けるであろう恐竜本や、今回買い残したフィギュア、これから行く予定の恐竜イベント等を取り上げる「過ぎさりし夏の思い出特集」の予定です。

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最後にモササウルスの巻以来の登場、19世紀のドイツの古生物石版画です。Hadrosaurus mirabilis Leidyと記されています。(画像12)

田村博氏

田村 博 Hiroshi Tamura

ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。

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