新恐竜秘宝館

Vol.46 「子供の科学雑誌 その1 後編」2019.2.7

前回に引き続き子供の科学誌。「子供の科学」や「科学と学習」に比べると、幼児向けだったり短命だっだり、年代も新しい物が多いので、秘宝館的には物足りないと思われる読者もおられるかと思いますが、ご安心ください。後半に超弩級(あくまで私の個人的主観ですが)のお宝を用意してあります。

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まずは1983年から10年程続いた「コペル21」(くもん出版)です。(画像1)
恐竜特集の全貌は判りませんが、かなり力を入れていた様でページ数も多めです。我家の在庫は5冊ほど。
●1985年5月号「よみがえる恐竜―古生物復元の秘密」 恐竜の発見/復元された恐竜/完全な恐竜を発見/石に生まれかわる恐竜/恐竜をほりだす/恐竜を組みたてる/恐竜のくらしをさぐる/最大の謎、恐竜の絶滅 18ページの特集
●1986年10月号「よみがえった翼竜QN」
スミソニアンで行われた、ケツァールコートルス・ノースロップアイ(QN)のロボットの飛行実験のレポート 10ページ
●1987年10月号「恐竜大図鑑―きみの知らない最新情報がいっぱい」恐竜の血は温かかった!/陸上をさっそうと歩く!/翼竜には毛が生えていた!他24ページもの大特集。
*この年、NHK番組「地球大紀行」とコラボした記事が連載され、1月号のティラノサウルスに始まり12月号まで、ディフォルメされた恐竜フィギュアが表紙を飾りました。
●1988年11月号「ねむれる恐竜を掘りおこせ!―カナダ・アメリカ恐竜化石発掘調査隊レポート」 読者達がドラムヘラーやグランドジャンクションで発掘体験をする16ページのレポート。
●1992年11月号「地球と生物の大進化」特別連載「恐竜時代の博物誌」の第2回。18ページ。持ってはいませんが第3回は12月号「恐竜はこうして滅んだ」らしいです。

「キンダーブック」(フレーベル館)の名は私にとっては懐かしい響き…幼少のころ確かに読んでいました。ただ恐竜と結びついた記憶は有りません。現在も刊行されているこの雑誌、実は「子供の科学」に次ぐ老舗でした。

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日本初の月刊保育絵本だそうで、科学誌ではありませんが、時折恐竜特集が組まれます。特に「キンダーブックしぜん」という科学絵本シリーズの恐竜特集はなかなか充実した内容です。(画像2)
●1968年12月号「おおむかしのいきもの」
全ページ見開きで、当時の恐竜画の第一人者清水勝のブリアンな恐竜画が楽しめます。
●1978年12月号(しぜん)「きょうりゅう」
模型を使ったモノクロジオラマ写真による、ユニークな恐竜図鑑。
●1997年8月号(しぜん)「きょうりゅう」
1987年版から内容を一新。カラーイラストを使った恐竜図鑑になっています。
●2005年1月号(しぜん)「きょうりゅう」
骨格写真と同じポーズのイラストを対比させたりと凝った造り。トロオドンやべロキラプトルは羽毛に覆われています。
●2007年1月号「きょうりゅうのせかい」
こちらは通常のキンダーブックの5ページ程の特集
●2013年11月号(しぜん)「きょうりゅうとおおむかしのいきもの」 恐竜に加え絶滅哺乳類なども登場しています。

*保育絵本とは幼稚園や保育園に直接配本される本の事だそうです。そう言われてみれば私の遥かな記憶も幼稚園でのものだったのかも…。

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やはり現在も刊行されている福音館書店の幼児向け月刊誌「かがくのとも」はウィキペディアにも載っていないので良く判りませんが、福音館書店HPのバックナンバー案内は1969年から。71年6月号の「おっかなどうぶつえんのちず」は地図を描くお話で、どうぶつえんにはマンモスや竜脚類もいます。我家にはあと2冊、2005年1月号の「とりになったきょうりゅうのはなし」と2013年3月号の「きょうりゅうのおおきさってどれくらい?」しかありませんが、バックナンバーの表紙を見る限り、他に恐竜が登場する本はなさそうです。50年間にたった3冊!びっくりです。(画像3)

同じく福音館書店から刊行されている「たくさんのふしぎ」
は創刊当初は「かがくのとも小学生版」と銘記されていました。創刊第5号にあたる1985年8月号は「恐竜はっくつ記」。長谷川義和博士らのマダガスカルでの恐竜発掘の様子をきれいなイラストで紹介しています。
1987年9月号は始祖鳥と翼竜を特集した「つばさをもった恐竜族」。1999年7月号は「時をながれる川」と題して、北海道の幌新太刀別川をさかのぼりながら、出土する化石から生物の歴史をたどるという趣向。モササウルスや首長竜も登場します。2000年1月号は「巨鳥伝説」。エピオルニスとモアのお話です。(画像3)

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その他の昭和の子供科学誌(画像4)
「科学読売」(読売新聞社)1955年4月号「失われた世界をたずねて―恐龍の話」 
理科社会科の副読本となっているので児童向けでしょうが、現物は群馬に有り確認できません。各恐竜についてなかなか詳しい説明がされていた筈なのですが…。
「サンチャイルド」(チャイルド本社)1978年9月号「きょうりゅう」 一冊丸ごと恐竜特集。当時はやっていたアーサー・ヘイワード作の恐竜模型写真(新秘宝館Vol.41もご覧ください)を見開きで使用、巻末には「きょうりゅうのいるこうえん」紹介も。上から名古屋の東山動植物園、東京の西六郷公園、清水の三保文化ランド、そしてカルガリー動物園。
「やさしい動物たち」(サンリオ)1989年1月号「恐竜のひみつをさぐる!」 動物大好きジュニアマガジンとサブタイトルがつけられたこの雑誌、「国会図書館サーチ」ページで調べたところ88年1月から刊行、終号は不明となっている謎の雑誌です。科博のマイアサウラ展に先立つ事約1年のこの号は、巻頭カラー25ページ程の特集で、子育てにも触れていますが、イラストは半端に尾を上げている過渡期のものです。そして発行日は1月1日(実際の発売はもっと前でしょうが)。8日からは平成になるのです。1月発行の本は他に、有名なバッカーの「恐竜異説」や学研の「最新恐竜論」など数点あるのですが、群馬にあるため発行日の特定までは出来ません。もしかしたらこの本が昭和最後の恐竜本という可能性は有ります。

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その後の子供科学誌(画像5)
●前述のサンチャイルドは「サンチャイルド・ビッグサイエンス」と名前と版型を変えて、現在も刊行中。恐竜特集号も度々組まれています。「きょうりゅうはおおきい?」(1999年9月号)/「きょうりゅうナンバーワン」(2003年12月号)/「きょうりゅうはいきていた」(2008年1月号)/「むかしむかしきょうりゅうはいきていた!」(2010年8月号)/「きょうりゅうのいたせかい」(2012年6月号)/「むかしいたきょうりゅうたち」(2016年9月号)
「かがくらんど」(世界文化社)は1975年から刊行されていたそうなので他にも恐竜特集は有るでしょうが、我家には2冊だけ「きょうりゅうはほんとにいたの?」(2001年8月号)「きょうりゅうのひみつ」(2005年7月号)は来日した「スー」の特集です。
「はてな?はっけんブック・チャレンジ2年生」(ベネッセコーポレーション)
「きょうりゅうと化石の本」(2005年11月号)/「きょうりゅう」(2011年11月号)/「きょうりゅうのヒミツ」(2015年10月号) 我家に有る「チャレンジ」は何故か2年生ばかりですが、ほかの学年の本もあるので恐竜特集はまだまだあるでしょう。
「科学のタマゴ」(学研プラス)の2006年1月号の特集は「恐竜の世界を探ろう」。1/35のティラノ骨格模型の付録付きです。
「週刊かがくる」(朝日新聞社)
「恐竜は絶滅していないってホント!?」(2005年2月)/「恐竜時代の空の王者翼竜とは!?」(2008年4月)/「パニック!君の学校に恐竜が現れたら!?」(2008年6月)/「地球最大のミステリー!恐竜絶滅の謎を追え!」(2008年8月)/「ティラノサウルスが最強の恐竜だったの?」(2012年4月)/「大昔、巨大なは虫類が海にいたの?」(2012年8月)/「いちばん大きな恐竜は何だったの?」(2012年9月)

*価格が2000円前後と高価で、雑誌と呼んでいいか判りませんが、エポック社から出版された「ドラえもんふしぎのサイエンスVol.10」(2013年5月)と「ドラえもんもっと不思議のサイエンスVol.7」(2015年5月)は「恐竜は生きている!ティラノサウルス骨格発掘キット付き」「最強生物伝説・アノマロカリス発掘キット付き」で内容も充実。ドラえもんのミニフィギュアも付いています。

さてここからはお宝自慢です。

前世界

前回や前々回の秘宝館で、戦前の雑誌の恐竜記事と巡り会うのは神の思し召しみたいな事を書いたのですが、あるキーワードを思いついて古書ネットで検索したところ思いがけなくヒット(そして思わぬ出費をする羽目になったのですが)しました。そのキーワードとは「前世界」。思えば日本の恐竜学の祖、横山又次郎博士の著書にも「前世界」「前世界史」があり(新秘宝館Vol.6)、ドイルのロストワールドも「前世界物語」「前世界探検」(新秘宝館Vol.30)のタイトルで訳されています。前世界…今ではお目にかからない言葉ですが、私的には、例えば先史時代などというより、おどろおどろしく夢の世界の様で、ゾクゾク感があります。

去年の暮、「少年」(時事新報社)大正9年(1920)5月号を見つけました。「前世界號(号)」の副題が眼に入り3000円だったので迷わず即購入。内容は期待以上で「蜥蜴の時代」と題した恐竜紹介の科学記事4ページの他「前世界の植物」(2ページ)「前世界の人類」(4ページ)も。さらには原始人の少年バンとゲムが主人公の科学冒険小説「猿が人間になった頃」までも掲載。しかもそれぞれの内容に即した巻頭2色刷グラビア付き!。
これに味をしめた私は検索し続け、つい先日、明治45年(1012)4月号を見つけてしまいました。サイトの本の内容紹介にあった「前世界の巨大動物」が引っ掛かったのです。しかし値段は18000円!さすがに数日間悩んだ挙句「ここで私が買わなければ永遠に歴史の闇に葬られる…これは日本恐竜界の損失だ!明治時代最後の雑誌だし…」とか自分に言い聞かせて結局大枚をはたいてしまいました。内容はというと、有名なドイツのハーゲンベック動物園(カアルハゲンベック動物園と表記)
の実物大古生物模型を2色刷りグラビア写真4ページで紹介、その解説記事「有史以前の巨大動物」が3ページという、写真は綺麗ですがまあまあ平凡なものでした。
とはいえ明治最後の年の恐竜の記録は超貴重、買って良かった良かったああすっきりした…というわけにはこれがいかないのです。実は同じ古書店に恐竜記事が載った「少年」がもう一冊あってそれが同年の6月号。これこそ正真正銘明治最後の恐竜記事(7月30日から大正)、しかもあの開祖横山又次郎先生執筆の「前世界の大怪物・梁龍と三騎龍と剣龍と細顎龍と」で、お値段やはり18000円となればこれはもうとことん悩みまくるしかありません。今後の展開に乞うご期待。

とりあえずは手元にある「少年」の恐竜をご覧ください。

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(画像6)は明治45年4月号と大正9年「前世界号」の表紙と「前世界号」の科学記事で中生代の爬虫類を紹介した「蜥蜴の時代」。ちなみに明治45年版では中生代の事を「メゾツオイクム、すなわち中世時代」とわけのわからない説明をしています。

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(画像7)(画像8)は明治45年4月号の巻頭グラビア写真「前世界の巨大動物四種」プレジオザウルス/イグアノドン/鳥類の先祖(右上に3羽います。解説文には始祖鳥ではなく、アルケオプテリクスリトグラフイカと呪文のように書かれています。ロンドン標本とベルリン標本についても触れ、その買い取り価格まで書いてあります。ロンドン、約6500円。ベルリンは約1万円!)/巨大なる蜻蛉(トンボがこんな漢字とは!何故かメノイラと表記)

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(画像9)は「前世界号」のグラビアのギガントサーラス。写真下の解説に「~側にいる鰐魚に比較して如何にその巨大なるかといふことが解るではありませんか。」なるほど良く見ると足元にワニがいました。本文の「蜥蜴の時代」にはギガントサーラスの名は無く、代わりにタイトルの横にいるヂプロドークスが詳しく説明されています。他に説明されるイグアノドンとプレシオサウルス、そしてプテラノドンはハーゲンベック動物園の模型の写真が添えられていて…って、いつの間にか呼び方が現代風になっています。イクチオサウルスもイラスト付きで紹介。

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(画像10)も「前世界号」のグラビア「熊と格闘しつつある前世界の人類」(「前世界の人類」より。…ホラアナグマ小さいですね)と、小説「猿が人間になった頃」の挿絵です。

もうひとつ気になっている大正時代の児童雑誌があります。やはり前世界のキーワードで見つけたのですが、「良友」(コドモ社)という雑誌に大正11年~12年頃「人外秘境・前世界」という小説?が連載されているのです。はたして恐竜が登場するロストワールド物なのでしょうか?「少年」と同じ位高価なので、試しに買ってみる勇気はとてもありません。

田村博氏

田村 博 Hiroshi Tamura

ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。

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