新恐竜秘宝館

Vol.40 「昭和少年漫画雑誌の恐竜 前編」2018.2.9

今回と次回2回に分けて、私が少年時代に「恐竜」のイメージを刷り込まれた、1960年〜70年代の少年漫画雑誌(主に五大週刊少年誌と称される「サンデー」「マガジン」「キング」「ジャンプ」「チャンピオン」)のグラビアや特集記事を飾った恐竜達の雄姿を紹介しようと思ったのですが…内容を確認しようと雑誌のページをめくったとたんそこに現れたのは「伊賀の影丸」「おそ松クン」「サブマリン707」「天才バカボン」…、車や兵器やプロレスや怪奇ものの特集、そして当時のプラモデルの広告。「…ナニモカモミナナツカシイ…」と呟きながら思わず目を通してしまいました。なのでなかなか原稿に取りかかれず、締め切りを前に焦っているところです。

我家にある本は、勿論当時買ったものが残っていたわけでは無く、全て古書店やネットでたまたま見つけたもの。古書店の棚では背表紙に恐竜の表記がないものを探すのは神頼みですが、ネットでは有難い事に内容を説明してあるので、おかげでだいぶ集まりました。しかし「少年誌の恐竜」の全貌はまだまだ闇の中です。

*今回は表紙に恐竜がいる本以外は表紙の画像は載せていません。個人的にはワクワクする軍艦や飛行機などかっこいい表紙絵が沢山あるのですが…

まずはマガジンと並んで老舗の「週刊少年サンデー」(小学館)から。

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引用元 「週刊少年サンデー」 1964年18号「恐竜の科学」(小学館)
巻頭カラー7ページ。扉の剣龍に続き「これはすごい!!かわりダネ恐竜」「恐竜の大決闘!!」「恐竜はいまもいる!?」の記事。(①上段)これが好評だったのか、同年25号から8週にわたり「恐竜の科学」が連載されます(文・佐伯誠一/え・萩原孝治 ①下段)。残念ながら第1回「2億年まえ恐竜があらわれた!!」第3回「地上最大の動物カミナリ竜」第7回「日本にいた恐竜」しか手元にありませんが、本の後半に掲載され、まじめで地味な記事です。第7回で取り上げられたトラコドンは現在では否定されていますが(たしか馬か何かの化石だった様な…)、この時点では日本初の恐竜化石で「これは大ニュースだ」と書かれています。
*当時のリアルタイムな解説「地質ニュース」をネットで見つけました。

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引用元 「週刊少年サンデー」 1966年1号「びっくり図解・恐竜」
巻頭カラー14ページ。恐竜の解説のほかに「もし恐竜が生きていたら」をテーマにした、まるであの名作絵本「ダイノトピア」を先取りしたような絵があります。(②)

1967年9号に「恐竜100万年」特集があるのですが、残念ながら持っていません。

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引用元 「週刊少年サンデー」 1968年9号「前世紀の怪動物」(小学館)
石原豪人が描くユニークな絶滅哺乳類画集。トリロフォドン、インパクト有りすぎです(③)。他に疾走するアルシノテリウムと、なぜか流氷に乗っているブロントテリウムがいます。

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引用元 「週刊少年サンデー」 1968年21号「恐竜大画報」(小学館)
特集記事はないのですが、巻頭に見開きのそれぞれが4つ折りになったカラーページがあり、開くと幅1mほどの超ワイドイラストになります(④)。恐竜の説明は「ティラノザウルス(しし竜)白亜紀(約1億8千万〜3千万年前)」「ブロントザウルス(雷竜)ジュラ紀(約1億4千万年〜7千万年前)」と大混乱。もはや両者の時代の違いなど些細な事の様に思えてきます。絵は良いのですが…ちなみに裏にはマンモスVS剣歯虎、ステゴザウルスと始祖鳥というまっとうな組み合わせの絵が描かれています。(高荷義之・画)

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引用元 「週刊少年サンデー」 1968年38号「海の大怪物」(小学館)
サブタイトルが「夏の怪奇特集」。海のUMA特集ですが、バシロサウルス(文中ではゼウグロドン)とプレシオザウルスが登場します。(⑤)

*この年のサンデーは何故か恐竜関連の特集が目白押しです。恐竜展も無いのに謎です。

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引用元 「週刊少年サンデー」 1968年42号 (小学館)
この号からサンデーの科学解説者佐伯誠一氏による日本人で初めてのネス湖探検レポート「恐竜の国ネス湖探検」の連載が始まります。それに関連して巻頭は「私は見た!!ネス湖の恐竜」と題した15ページのカラー特集。おきまりの写真の紹介や正体を推測するページの他にこんなものも。ネス湖の鳥観図は綺麗で良いのですが、「大昔のネス湖を再現」はちょっと無理やりでは?。やはり「恐竜死闘の図」は少年誌には欠かせないものだったのでしょうか。連載の方は6回までは確認できます。(⑥)

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引用元 「週刊少年サンデー」 1968年44号「大恐竜―原色恐竜大百科」(小学館)
満を持したかのような恐竜大特集です。巻頭カラーページから、連載の「ネス湖探検隊3」まで、実に34ページも費やしています。表紙もティラノの頭骨、しかも正面から鼻面だけという思い切ったデザイン。内容は骨格の写真が多く載せられていて解説も丁寧、定番のドラマチックな絵は「イグアノドンの最後」だけで、まるで学習図鑑の様です。(⑦)

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引用元 「週刊少年サンデー」 1968年46号「大恐竜時代」(小学館)
そして1週おいた46号で再び恐竜が登場します。「大恐竜時代」。サブタイトルに「迫力名画物語」とうたっただけあり、44号とは一変して少年が喜ぶ血みどろ対決シーン満載です。メインのカラー絵は巨匠・小松崎茂によるもの。「恐竜のさいご」と題された絵(これは高荷義之・画)は、海に沈みゆく島に恐竜達が呉越同舟という絵(どこかで見た事があるシチュエーションなのですが思い出せません)。絶滅を象徴しているのでしょうが、解説では絵には触れず、気候の変化が云々と、ごく普通の事が書いてあります。カラーページと「ネス湖探検5」で29ページ。さらに8ページのギャグ漫画が付いた大特集です。(⑧)

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引用元 「週刊少年サンデー」 1969年27号「恐竜の谷」「大恐竜100」(小学館)
巻頭カラー16ページで映画「恐竜グワンジ」を紹介。主に映画のスナップが使われているのですが、いくつかイラストも使われているのでご紹介。サーカスの恐竜のイラストは、グワンジがサーカスの象と戦うシーンに添えられています。「大恐竜100」は14ページの特集で恐竜に関する100項目の豆知識が学べます。例えば「19:今までに発見されたものは、約230種もある。(当時はそんなものだったんですね〜)」「69:角竜のツノは武器ではなく木をたおしたり、根をほったりするのに使った。とくに、トリケラトプスは、ツノの間に、枝をはさみ、その葉をたべた。(斬新だ!)(⑨)

*1961年から62年にかけて、恐竜も登場する「少年ケニヤ」漫画版が連載されていたので、何らかの恐竜特集があったかもしれません。

サンデーは以上です。一方の雄「マガジン」は、サンデーに匹敵するほどのヴォリュームなので次回にまわすとして、ここでは「キング」と「ジャンプ」の恐竜をご紹介。

「週刊少年キング」(少年画報社)

引用元 「週刊少年キング」 1968年16号「20世紀の恐竜大調査」(少年画報社)
残念ながら未入手で内容不明。カラー口絵も「恐竜は生きている」。このタイトル、今だったら鳥類の事なのですが…UMAものか?。

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引用元 「週刊少年キング」 1969年14号「原始大魔獣」(少年画報社)
巻頭カラー11ページ。表紙を見ると新生代の絶滅哺乳類特集の様ですが、サブタイトルが「化石で見る3億年前の哺乳類」。なんと半分のページを獣弓類に充てています。(⑩)

「週刊少年ジャンプ」(集英社)

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引用元 「週刊少年ジャンプ」 1981年42号 (集英社) 「少年ブック」1962年10月号 (集英社)
残念な事に、我家には恐竜が登場する「週刊」少年ジャンプは1981年42号一冊しかありません。しかも表紙のみという有様。しかしジャンプの前身にあたる月刊誌「少年ブック」1962年10月号に「巨人と恐竜」なる巻頭8ページの特集があります。なかなかの迫力のある絵で、表紙はコモドドラゴンなのですがお見せしたくて載せてしまいました。ちなみに巨人とはギガントピテクスの様ですが詳しい説明はありません。(⑪)

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引用元 「週刊少年ジャンプ」 1978年8月増刊号 (集英社)
そして私が恐竜グッズコレクターとして覚醒した頃、少年ジャンプ1978年8月増刊号で漫画誌史上空前の大特集とうたった85ページにもわたる恐竜特集が組まれました。ソ連科学アカデミーの「大恐竜展」の開催にあわせたもの。構成・文は若かりし日の金子隆一さんです。新秘宝館Vol.14でも触れましたが、ここでは詳しく紹介しましょう。

まずは「史上最大の決闘」とタイトルがついた三つ折りで横向きに綴じられたグラビア。闘っているのはティラノサウルス・レックスとタルボサウルス・エフレモフィ(失われた種小名、今ではバタールに統一)です。場所は陸続きだったベーリング海峡という設定。その裏には「恐竜文明の世界」と題された、絶滅しなかった恐竜が作った都市とその住人の想像画(部分)。ディノサウロイドに先立つ事4年、こちらの恐竜人間は尻尾こそ生えていますが服を着ていて高度な機械文明を誇っています。
特集の扉絵はゴジラ立ちイグアノドン骨格。(⑫)

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「これが恐竜だ!」の内容はというと、恐竜の復元や説明は古色蒼然としていて、ブラキオサウルスやパラサウロロフスは水中生活者だし、ヒプシロフォドンは木に登っています。あの「大恐竜時代」(新秘宝館Vol.11)や「エデンの恐竜」で、水平姿勢の小型獣脚類は既に世に出ていましたが、他の恐竜のリニューアルにはまだしばらく時間がかかるのです。さしもの金子さんも旧説に基づいた解説をしていますが、それでも「最近の研究では、恐竜類がじつは温血動物ではなかったか、という説もあらわれ、今後の研究がまたれている。」と書いています。さすがです。しかも「恐竜の大きさ」のページで新発見のケツァルコアトル(まだ名無し)を三菱F1戦闘機と比較して紹介したり、アトラントサウルスを74式中戦車と比べたりと、オタク魂も垣間見せます。他の記事は、哺乳類と恐竜の生態比較表(ここで温血説に触れています)やブラキオサウルスの死体の利用方!UMAについての考察など。金子さん節が早くも炸裂しています。(⑬)

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そして「恐竜大事典」。まずは少年誌とは思えない本格的な爬虫類系統樹を示した後、230種にものぼる古生代・中生代の爬虫類を紹介しています。原始爬虫類に始まり、ケモノ竜、カミナリ竜と続いて、最後は翼竜・海竜をそれぞれ50音順に並べています。例えばケモノ竜はアクロカントサウルスからメトリカントサウルスまで34種(エゾサウルス=エゾミカサリュウもイラスト付きで紹介)、恐竜類の最後の項、角竜は、アガタウマスからレプトケラトプスまで15種程です。この大事典の情報量の多さは前代未聞で、金子隆一さんの面目躍如といったところです。
さらにおまけ?として2編の恐竜ギャグ漫画が掲載されています。「竜人・寺野サウルス」は近年右翼の論客として知られる小林よしのり作、「恐竜天国」はコン・タロウ作です。(⑭)

次回、後編では「少年マガジン」「少年チャンピオン」「ぼくらマガジン」「少年ワールド」等を紹介する予定です。

田村博氏

田村 博 Hiroshi Tamura

ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。

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