新恐竜秘宝館

Vol.14 追悼・金子隆一さん

この8月31日、サイエンスライターの金子隆一さんがお亡くなりになりました。脳出血だそうです。90年代、情報に飢えていた我々恐竜ファンにとって、最新の恐竜情報を次から次へと提供してくれる金子さんは本当にありがたい存在でした。私は個人的にも、1998年にアメリカ東海岸恐竜めぐりに連れて行ってもらったりして、お世話になっています(秘宝館Vol.20参照)。何故か男二人でエンパイア・ステートビルに登って夜景を眺めたり、ボストンの老舗のロブスター屋でこってりしたやつを死ぬほど食べたりと楽しい思い出はあるものの、悲しいことに2ショットの写真がありません。有るのは恐竜骨格の写真ばかり…。

この10年ほどは年賀状のやり取り程度のお付き合いでしたが、2007年の著書「知られざる日本の恐竜文化」で、資料提供などでお手伝いできたのは嬉しい限りです。

今回は我が家にある金子さんの恐竜関係の著作を、感謝をこめて、年代順に振り返ってみたいと思います。



hihoukan_14-1978.png

[1978]
『少年ジャンプ増刊「恐竜・SF特集」』
金子さん22歳、これが恐竜解説デビューかどうかはわかりませんが、気合が入っています。少年漫画誌の特集とは思えない事細かな解説。恐竜像そのものは、温血説に僅かに触れている程度で、竜脚類水棲説やパラサウロロフス、シュノーケル説を紹介したりと当時の「最新」ではないのですが、220種もの恐竜・古生物を並べた「恐竜大事典」では、数多くのマニアックな古生物を紹介、後の金子節の片鱗がうかがえます。


hihoukan_14-1990.png

[1990]
12年間の空白の後(勿論私が把握していないと言うだけですが)一気に3冊の恐竜本を世に送り出します。1990年と言えば、科博のマイアサウラ展や幕張メッセの大恐竜博が開催されかなりの恐竜ブームになった年でした。
『恐竜大絶滅の謎』(学研ジュニアブックス)子供向けとはいえ、金子さんの語り口は熱い。
『巨大恐竜はなぜ消えたか?!』(学研のドッキンシリーズ)は構成を担当、文章に金子節は出ませんが、1冊ほぼ丸ごと絶滅説紹介というのは思い切った構成です。
『恐竜大論争!』(JICCブックレット)当時の最新恐竜論を細かく説明した、恐竜ファンのニーズに答えるもの。さらに『ブックガイドマガジン 特集・オトナのための恐竜本フルコ-ス』(幻想文学出版局)では「恐竜を科学するためのブックガイド」と題しておすすめ恐竜本を紹介しています。


hihoukan_14-1991-1992.png

[1991]
『SFマガジン 特集・恐竜千年王国』に「自貢恐竜博物館訪問記」を寄稿。

[1992]
フジテレビ主催の恐竜展「最後の恐竜王国」のガイドブックの執筆を担当。そして気鋭の執筆陣を集めた『最新・恐竜進化論』(別冊宝島EX)では「恐竜を理解するキーワード」「恐竜蘇生のゆめは実現するか?」「氷点下の世界に生きた恐竜たち」と、誰よりも多い3本もの記事を書いています。


hihoukan_14-1993.png

[1993]
ジュラシック・パーク公開で恐竜ブームに沸いた年だけあって、さすがに賑やかです。
『新恐竜伝説』(早川書房)
「メラノロサウルス科をめぐる混乱」「プロトケラトプスは本当に一属か?」「新分類群ケラトサウルス下目」「プロトアビスをめぐる混乱」などなどマニアックな項目が目白押し。
『恐竜・大ロマン99の謎』(二見文庫)
こちらは長尾衣里子さんとの共著のせいか多少ソフトタッチ。
『ティラノサウルスは女王に率いられていた』(ポケットブック社)も一般向け。表題の「女王」はもちろん当時話題の「スー」。
『SFマガジン増刊号・恐竜王国』では「世界の恐竜博物館」と「恐竜ブックガイド」を執筆。
『クオーク10月号 激変・最新恐竜学説』では「恐竜進化論が書きかえられる」と題して、単系統、多系統発生説を解説。
『ザ・恐竜最新の謎100』(学研ムテキ・ブックス)を監修。


hihoukan_14-1994.png

[1994]
まだまだ恐竜ブームは続きます。
『覇者・恐竜の進化戦略』(新ハヤカワノンフィクション文庫)Tレックスの社会性/水生角竜?/三脚歩行雷竜/恐竜命名150年祭・等
『恐竜学のすすめ』(裳華房ポピュラーサイエンス)恐竜分類学の新時代/恐竜の分子生物学/恐竜の新しい生態復元/恐竜の発掘から展示まで/恐竜情報のニュース・ソース他
『禁断の超「歴史」「科学」』(別冊歴史読本)の中の「当世恐竜ギョーカイ事情」で、恐竜ファンなら誰もが怒りを覚えるあすかあきおを一刀両断。痛快です。
そして94年から95年にかけて科学朝日の常連に。
『科学朝日7月号・恐竜の愉しみ方』
「ジュラシック・パークの間違い探し」に加え「それどころか恐竜が鳥の子孫?」と題して鳥と恐竜の関係を説明しつつBCF仮説をほのめかし、そして…
『科学朝日10月号』で「新説・恐竜こそ鳥の子孫」と題して、満を持してBCF仮説を紹介します。金子さんはこの説に肩入れしていました。さらに…
『科学朝日11月号』で「花に追われた恐竜に非難沸騰!」と題して、冨田幸光さんと共に今や伝説となったNHK批判。年をまたいで95年1月号でも「論争再燃!白熱!!」しています。


hihoukan_14-1995.png

[1995]
『進化にワクワクする本』(朝日ワンテーママガジン)半分程金子さんが書いています。
『科学朝日3月号・「進化」とっておきの不思議』「ポスト恐竜で、なぜ恐鳥は哺乳類に敗れたか」「翼竜は、なぜ翼の指をなくさなかったか」の2項を執筆。
『翼竜の謎』(二見書房)翼竜・首長竜・魚竜・哺乳類型爬虫類についての、とてもためになる本です。


hihoukan_14-1996-1998.png

[1996]
『最新恐竜事典』(朝日新聞社)これも至れり尽くせり。
『イラスト図解・謎と不思議の生物史』(同文書院)仲間の3人のイラストレーターと、楽しんで作っている感じが溢れています。

[1997]
『新恐竜伝説(改訂増補版)』(ハヤカワ文庫)1993年刊の同名書の文庫版なのですが、最新情報にリニューアルされているのはさすが。

[1998]
『哺乳類型爬虫類』(朝日選書)
それまであまり紹介されていなかった分野なので、恐竜ファンに、とても歓迎された一冊です。
『SFマガジン9月号』ハリウッド版ゴジラ公開に合わせた特集「巨大怪獣の咆哮」に「恐竜―怪獣という神話的存在を解く鍵」と題した一文を寄せています。ちなみに金子さんはハリウッドゴジラ肯定派です。
『原獣事典』(アクション・コミックス)谷口ジロー作の絶滅哺乳類漫画に解説を書いています。


hihoukan_14-1999-2000.png

[1999]
『パンゲア』三畳紀至上主義者[ぐるーぷ三畳一間]による同人誌。板歯類についての濃い特集と、ゴーストランチ巡礼記。
『大絶滅』(実業之日本社)第二章は「恐竜絶滅理論の変遷」金子さんは隕石衝突説ではなく、スーパープルーム説を支持しています。

[2000]
『ニューワイド学研の図鑑・恐竜』現在も版を重ねている児童向け図鑑。執筆者に金子さんをはじめとして、日本の恐竜学の先鋭を採用したため、子供向きにもかかわらず、載っている恐竜の約半数はなじみのない恐竜です。
『ダイノサウルス作戦』(ハルキ文庫)豊田有恒1979年作の時間物SF。2000年ハルキ文庫版に解説を書いています。


hihoukan_14-2001-2002.png

[2001]
『映画秘宝』ジュラシック・パークⅢの公開にあわせた恐竜特集の中に「金子隆一が語る映画の中の恐竜進化論」というインタビュー記事があります。
『チョコラザウルスハンドブック』(勁文社)金子さんはチョコラザウルス本体の解説書も書いていました。
『恐竜学がわかる』(アエラムック)日本の一線級恐竜関係者による、恐竜学から造形、文化までをカバーした本。

[2002]
『最新恐竜学レポート』(洋泉社)最終章の「化石業界のダークサイト~恐竜業界トンデモカタログ」は金子さんならでは。
『恐竜の時代』(学研の大図鑑)解説を分担して書いています。
『リラックス11月号 特集・恐竜』金子さんは「恐竜最新事情」を。ちなみに私も、所十三さんと恐竜談義をしてます。


hihoukan_14-2003-2010.png

[2003]
『恐竜世界のひみつ』(学研まんが新ひみつシリーズ)学習まんがの監修と解説を担当。相手が子供だからといって容赦しません。

[2004]
『揺籃の星・下』(創元SF文庫)J・P・ホーガンのカタストロフィーSF。SF解説者としての執筆ですが、上巻に恐竜について語り合うシーンがあり、金子さんはあとがきでそれにツッコミを入れています。

[2007]
『知られざる日本の恐竜文化』(祥伝社新書)前述の、私がお手伝いした本。私の紹介文で「恐竜玩具の収集と研究については日本一」とのお墨付きを頂いたのは一生の自慢です。恐竜オタクの正しいあり方など、何かと物議を醸した本でもあります。
『恐竜化石のひみつ』(学研まんが新ひみつシリーズ)「恐竜世界のひみつ」の続編。ということは、金子節が子供にも通用した!?

[2010]
『大量絶滅がもたらす進化』(サイエンス・アイ新書)金子さんの絶滅テーマの集大成。
『徹底図解・恐竜の世界』(新星出版社)
なぜか表紙に「金子隆一」のクレジットはありませんが(中に監修・執筆と記されている)、事実上金子さんの著作です。最後の恐竜本となってしまいました。


そしてしめくくりは恐竜ではないですが、絶滅した人類をとりあげた『アナザー人類興亡史』(技術評論社2011)と遺作となった、絶滅節足動物モノ『ぞわぞわした生きものたち』(サイエンス・アイ新書2012)
楽しませてもらいました。

もちろんこれ以外にも沢山書かれていると思いますが、特に雑誌に掲載された物などは探しようもありません。そして他の科学分野の著作、さらには「天才てれびくん」をはじめとする携わった映像作品の数々…我々は失ったものの大きさを痛感するしかありません。
心よりご冥福をお祈りいたします。

最後に、金子さんがレギュラー陣の一人として支えたあの伝説の恐竜専門誌「恐竜学最前線」「Dino Press」の、金子さんの記事のタイトルを列記しておきます。

恐竜学最前線(1992~1996)
1「恐竜はどこまで巨大化するのか」
 「はたして恐竜は隕石にトドメをさされたのか?」
2「コロラド・ユタ州恐竜街道を行く」
 「最新恐竜文献をいかにして集めるか」
3「絶滅DNA」「検証 ラプトル一族」
5「中国の恐竜研究は今」
6「自貢恐竜博物館を訪ねて」
7「中国・河北省、成都博物館を訪ねて」
8「イギリス恐竜紀行」
 「恐竜情報の宝庫UCLA図書館」
9「ベルギー・ドイツ恐竜紀行」
10「ドイツ恐竜紀行・後編」
11「南アフリカ恐竜紀行・前編」
12「南アフリカ恐竜紀行・後編」
 「恐竜カルト・クイズ」
13「アメリカ恐竜紀行」
「恐竜絶滅最新のシナリオ」

Dino Press(2000~2002)
1「タイ恐竜紀行」
2「はたして鳥は恐竜か(パート2)」
3「アメリカ恐竜紀行」
4「イギリス恐竜紀行」
5「スイス・イタリア恐竜紀行」
6「イタリア恐竜紀行」
7「SVP総会報告」「イタリア恐竜紀行」

田村博氏

田村 博 Hiroshi Tamura

ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。

田村 博氏のオフィシャルサイトはこちら

バックナンバー