新恐竜秘宝館

Vol.1 ティラノVSトリケラ:宿命の対決の歴史

前回の「秘宝館」からだいぶ間が空いてしまいましたが、気分も新たに(文章は相も変わらずですが)、震災被害を奇跡的に免れた我家の恐竜たちと共にお届けする[新・恐竜秘宝館]。第1回目は、現在上野の国立科学博物館で開催中の「恐竜博2011」の目玉となっている「ティラノVSトリケラ」の抗争の歴史を振り返ってみようと思います。


同じ地層から出土し、トリケラのフリルにティラノの噛み跡があったとなれば、両者の抗争は疑いようも無く、それが7000万年を経た今、我々の心を熱くさせるとは、正に「地球史上最大の決戦」と銘打ってもいいでしょう。(対抗馬としてアロサウルスVS ステゴサウルスがありますが、ステゴはトリケラほど強そうでなく、インパクトで劣ります)
今回の恐竜展の会場では、ティラノサウルス“バッキー”はしゃがみこんで待ち伏せの体勢。一方のトリケラトプスは前足をピンと伸ばし頭を高く掲げ堂々としていて、バッキーが少々小ぶりなこともあって、バッキーよりも強そうです。
かって、この恐竜界最大のライバル対決の図といえば、角を低く構え隙をうかがうトリケラの前にそびえ立ち咆哮する凶暴なティラノ、風吹きすさぶ荒野での一対一の果し合いといったイメージで、これは1930年代のチャールズ・ナイトの作品から来ていると思われるのですが、60年代から80年代にかけて、わが国の少年漫画誌のグラビアや図鑑のページを血で染めた両雄の戦いの有様は、私の様な長いこと恐竜マニアをやっている者の心にしっかりと刷り込まれているのです。

066_1-1.jpg 写真 1 チャールズ・ナイトの作品



懐かしい昭和の対決場面、とくとご覧あれ。

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写真 2 昭和の対決場面

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写真 2 昭和の対決場面

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写真 2 昭和の対決場面

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写真 2 昭和の対決場面

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写真 2 昭和の対決場面

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写真 2 昭和の対決場面

写真3はさらに時代をさかのぼった超珍品で、昭和7年(1932)発行の「続・動物の驚異」(新光社)という本にあった挿絵。ナイトより古いかも。
さて、90年代、恐竜像の変革が進むと、イラストも様変わりしてきます。トリケラは群れを成し、時には円陣を組み対抗(マーク・ハレットの絵など)。ティラノもチームで襲ったりし、もはや決闘ではなく単なる狩り。

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写真 3 続・動物の驚異

(写真4・5)おどろおどろしさは影を潜め、勿論、こちらの方が正解とは判っていても一抹の物足りなさを感じてしまいます。バッキーに言ってやりたい。「昔のティラノサウルスは、待ち伏せなんて姑息なことはしなかったぞ。」

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写真 4

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写真 5

これだけポピュラーな対決シーンなので、映像の方もさぞや多いだろうと思って調べたのですが、以外や以外、映画では2例しか見つけられませんでした。スカされた例をあげると、1925年の「ロストワールド」。ティラノもトリケラも出てくるのですが、トリケラの相手をするのはアロサウルス。見た目はティラノと判別不能なのですが、字幕で(無声映画なものですから)チャレンジャー教授がアロと断言してしまうので、いた仕方ありません。ティラノ(らしき獣脚類)はアガタウマスという、今では認められていないスティラコサウルス風角竜と対決します。ディズニーの有名なアニメ「ファンタジア」ではティラノの相手はステゴサウルス。「恐竜100万年」でトリケラと名シーンを演じるのは巨大すぎるケラトサウルス。「恐竜グワンジ」(一般にはアロサウルスとされていますが、文献によると3本指のティラノだそうです)はスティラコサウルスを倒し、「ジュラシック・パーク」に至っては、トリケラは病気で寝ているだけといった有様。と言うわけで、2強の対決シーンが見られるのは、チェックした限りではレイ・ハリーハウゼンがアニメートした1956年の「動物の世界」(写真6)と、なんとまあ1998年の「モスラ3」でした。

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写真 6 動物の世界

前者はお互いが絡む前に火山が爆発して、揃って溶岩に呑まれてしまいますし、目を覆いたくなるような特撮の後者は、ティラノがトリケラを襲った直後、キングギドラが現れ、ティラノをくわえて放り投げてしまいます。肩透かしもいいところ。もちろん最近のテレビの、CGを駆使したドキュメンタリー番組では幾度となく対決シーンが流されていますが、イラストの場合と同じく、じっくり相対するのではなく、疾走するトリケラをティラノが追いフリルの後ろあたりをガブッというのが定番となっているようです。

さて最後にフィギュアを紹介しましょう。
我が家にはティラノVSトリケラでセットになったキットが3種あるのですが、「アオシマ」のソフビキット「恐竜物語」は
秘宝館Vol.63で紹介済みなので、残りの2点を紹介。

両方とも「海洋堂」のレジンキットで原型作者不明です。写真7は別にモノクロなわけでは無く、当時何を考えてか真黒に塗装してまった物。1/35スケール。

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写真 7

写真8は小さいキットで、だいぶ新しめの造形になっているので90年代の物かも。

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写真 8

以前、アメリカのガレージキットメーカー、「Lunar Models」からナイトの絵を忠実にモデル化したキットが発売されていたのですが、買い逃してしまったのが悔やまれます。
しゃがみポーズティラノのキットもあります。しゃがみポーズ自体は昔からイラスト等有り(今回のバッキーは、骨格がポーズをとっているのが目新しい)、モデラーの制作意欲をそこそこかきたてたようです。

写真9はSHINZEN造形研究所製のミニキット。

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写真 9 SHINZEN造形研究所製のミニキット

写真10は海洋堂の非売品で、原型師はたしか山崎繁さんだったと思います。

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写真 10 海洋堂の非売品

最後におまけの写真11・12。今回の恐竜展のポイントの一つ、“部分的に毛が生えたティラノサウルス”を先取りしているような…。

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写真 11 毛が生えたティラノサウルス

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写真 12 毛が生えたティラノサウルス

ちなみに写真12はCDで、80年代の人気ロックバンド「レベッカ」の「ブロンドサウルス」です。

田村博氏

田村 博 Hiroshi Tamura

ジャズピアニスト。1953年1月27日生まれ。
恐竜倶楽部草創期からのメンバー。恐竜グッズ収集家として知られる。東京、横浜のライブハウスを中心に活動中。
1996年に、ベースの金井英人のグループの一員としてネパールでコンサートを行った。「開運なんでも鑑定団」などテレビ番組や雑誌に度々登場。「婦人公論」2002年7/22号で糸井重里氏連載の「井戸端会議」で国立科学博物館研究室長・富田幸光氏と対談。千葉県市川市のタウン誌「月刊いちかわ」に、恐竜に関するエッセイを半年間連載。1998年の夏には群馬県と福島県の博物館の特別展にコレクションを提供。2000年夏には福井県「恐竜エキスポふくい2000」にコレクションを提供、サックス奏者、本多俊之とのデュオで、恐竜をテーマにしたコンサートを行った。

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