エッセイ

第58回 恐竜の耳はどこ?

今回は耳の話。もちろん恐竜にも耳がありましたが、哺乳類のような大きな外耳はなく、見た目にはほとんどわかりません。
たとえば、右はフェバリット・コレクションのティラノサウルス(ターシックモデル)です。赤い矢印で示した部分が耳(外耳)ですが、小さなくぼみで、よく注意して見ないとわかりませんね。


アゴの付け根に耳がある理由

脊椎動物が上陸したとき、空気の振動を感じる器官として発達したのが、鼓膜と耳小骨という小さな骨です。
哺乳類は、鼓膜から伝わる振動を増幅して伝える仕組みを持っています。
鼓膜の内側にあるツチ骨、その内側のキヌタ骨とアブミ骨という三つの小さな骨からなる耳小骨が、テコの働きをしているからです。この仕組みによって広い範囲、特に高い音や微妙な違いを感じることができるのです。
哺乳類の耳小骨は、下顎から分離することよって進化したと考えられています。初期の哺乳類で、食べ物をよくかむためアゴの骨が大きく進化した結果、役割の少なくなった後部歯骨が下あごから分離して耳小骨を形成したのです。そういえば、耳はアゴの付け根あたりにありますね。


アゴで聞くクジラ

また、哺乳類でもクジラなどには目だった外耳はなく、小さな穴が空いているだけです。水中にいるクジラは、音を鼓膜の振動ではなくて、骨の振動でとらえるのです。
クジラの祖先とされるパキケトゥスも耳骨を持ち、耳の仕組みがクジラと同じと考えられています。
全ての哺乳類で、下アゴ骨と中耳にあるツチ骨とキヌタ骨は1つの軟骨(メッケル軟骨)から発生しています。下アゴで聞く仕組み、クジラ類が特別に進化させたわけではないのですね。
最近では、鼓膜を通さずに音を聞くことができる骨伝道システムのイヤホーンやスピーカーも市販されています。夜間など、一人でテレビが楽しめるわけですね。


爬虫類の耳

一方、爬虫類では下図に示すように、耳小骨は、耳小柱とその先端部の外耳小柱という軟骨よりなっています。鼓膜はむきだしですし、ツチ骨などの骨はなく、耳小骨もまっすぐでシンプルな構造です。

爬虫類の耳の構造(参考1を参考に作成)


恐竜の耳

恐竜の耳は、ヒトやウサギなどの哺乳類が持つような大きな耳(外耳)はなく、現生の爬虫類のように、目の後ろの方に小さなくぼみがあったと考えられています。現生鳥類にも目の後ろに耳(耳穴)がありますが、羽毛に隠れて見えません。羽毛恐竜もこんな感じだったのでしょう。
耳小柱だけで、鼓膜と内耳をつないでいる単純な耳の構造の恐竜などは、ある限られた音域と音質の音しか聞こえなかったとする考えがあります。せいぜい仲間や敵の声を識別できれば十分だったのでしょう。
しかし、カエルなどの両生類や鳥類がさまざまな音(周波数)でコミュニケーションを行っていることから、これらの聴覚が哺乳類よりも劣っていたわけではないとする考えもあります。
パラサフロロフスのように、独特の音を出していたとされる恐竜もいます。仲間の音の違いをとらえるため、大きな外耳があったとすれば面白いですね。


参考:爬虫類の進化(疋田 努 著、東京大学出版会)
   驚異の耳をもつイルカ(森満 保著、岩波科学ライブラリー)

バックナンバー